『火星の土方歳三』/吉岡平/ソノラマ文庫/2004.5.31初版


斗(たたか)って斗って、死してなお斗いを欲する漢(おとこ)、土方歳三。郷里より遥かな蝦夷の地にて敵弾に倒れた彼が見上げた宙に、軍神マルスの司る赤い星が輝いていた・・・。
カッコイイですねぇ。豪傑という形容がぴったりな男として描かれる土方が、火星を舞台に美女を助け怪物を倒し大活躍するという、単純に言えばそんな話。要するに所謂「スペオペ」をやるわけですが、土方歳三をはじめ彼に追従する幾多のキャラクターがとても魅力的です。fuchi-komaはE・R・バローズの「火星シリーズ」も読んでいなければ、新撰組だってNHKの大河ドラマをちらと観たのと『るろうに剣心』仕込みの怪しい知識しか持ち合わせていません。しかし、そんな事はどうでも良くなるくらいに楽しませてくれるのが、吉岡平の火星世界であり土方歳三です。
本書を読むと古橋秀之サムライ・レンズマン』を読んだ時と似た感情が身体の中から湧き出してきます。それは即ち「高揚」あるいは「興奮」といったものでしょう。「なぁに、これくらい。新撰組副隊長であった頃は、この土方、かつてはこれに数倍する敵勢に囲まれた事もあったのだぞ(fuchi-komaのイメージ台詞です)」とか何とか言って愛刀を構えて敵陣に特攻したり…うーん、トリビュート作品という点も含めあらゆる意味で『サムライ・レンズマン』に似てますが、実際に比べてみると面白いと思います。息をつかせぬ面白さで読者を飽きさせない点も同じですね。
更には例の「火星は地球より重力が弱いから…」という『スターウルフ』(条件は逆ですけど)ばりの、「重力環境の差を利用した超絶アクション」が満載なのも嬉しいところです。「おっ、出たな!!」と思わず叫んでしまいます^^;
いやー、何はともあれ楽しかったです。しかしfuchi-komaの周りでは「読んだ」という人を寡聞にして知りません。話題になるには充分な作品なので、これが読まれないのは惜しくてならない。バローズや新撰組に知悉していなくとも、皆さん、是非一読されたし。オススメです。