「六番目の貴公子」…梶尾真治『黄泉がえり』収録

 先日紹介した小松左京「人魚姫の昇天」と同様に民話をSF解釈するもので、こちらは「なよ竹のかぐや姫」を題材にしています。
 竹取りの翁に育てられたかぐや姫の美貌は、多くの貴族に求婚を迫らせるものだった。中納言にあるかじのもとのしんひと氏も一目見るなりかぐや姫の虜になってしまい、他の五人の貴族と同様、かじのもとに結婚の条件として要求された課題「鵺の子を連れてくる」を実現しようと奮闘するのだが…。


 不撓不屈、“マニアック”、諦めという事を知らない主人公の中納言殿の行動が爽快です。鵺の子を捜すためにははるか天竺まで突き進み、かぐや姫が月に帰ってしまったと知るや識者の情報を元に船をこさえて海の果てを目指す。猪突猛進な彼の姿勢が物語をアップテンポにし、笑いながら気軽に読める娯楽作になっています。オチがいささか唐突ではありますが、これはこれでカジシンらしいバカSFという感じで、わりと好きな一篇です。友達と「こんなバカなSFがあった」と笑いあうにはもってこいの作品だと思います。