黄泉びと知らず (新潮文庫)

黄泉びと知らず (新潮文庫)
「黄泉びと知らず」…梶尾真治『黄泉びと知らず』(新潮文庫)収録


 星雲賞受賞作、早速読んでます。
 『黄泉がえり』の方は読んでいたのですが、こちらは「本編の蛇足なのでは〜?」と思って、読んでいなかったんですね。そしたら星雲賞受賞。この期に買ったわけですが、上の雑記で触れてるように、カジシンのサインを貰い損ねた本になってしまいました。いつか再びまみえ、この書にサインを貰おうと、ここに誓ってみたりします。
以下、表題作の感想です。


 最初の一篇「黄泉びと知らず」は、「黄泉がえり」なる現象を知った元夫婦が息子を黄泉がえらせようと熊本に向かう…という『黄泉がえり』の外伝にあたる短編です。
 感想としては、うーん、やっぱり良いなぁカジシン、と唸るくらいしか…じゃダメですよね。でも「美亜へ贈る真珠」や「地球はプレイン・ヨーグルト」のように格別「凄いっ!」という作品でもなくて、やはりこれは『黄泉がえり』を踏まえた読者だけが特別な一篇に感じられる作品なのだなぁと感じます。
 カジシンももう56歳くらい、ですか? 何と言いましょうか、こういう「凄いわけじゃないけど、心に染み入る」作品の味は、やはり昔よりも優れているのは確かでしょう。「梨湖という虚像」のようにわざわざ宇宙船に乗らずとも良くなった、とか、クロノス・ジョウンターはもう必要ない、とでも言いましょうか。何か貫禄を感じますね。


 因みにタイトルの「黄泉びと知らず」というのは「黄泉がえらなかった人々」を表すもので、つまり本作は『黄泉がえり』と表裏一体を成すもの、なわけですね。