『SFベスト201』

SFベスト201 (ハンドブック・シリーズ)

SFベスト201 (ハンドブック・シリーズ)

買いました。
2000年のグレッグ=イーガンから遡って70年代のエリスンヴォネガットまで201冊のSFの名作をレビューしてます。201冊と量が多めなのは良いのですが、読者対象を考えるとちょっと微妙なところがあります。
もし対象が「SFに興味あるけど何を読んだら良いか判らない」人向けだとすると、この人は、『SFハンドブック』を読んだ方がよろしい。SFの何たるか、系統や用語・各賞の説明、作家の紹介、日本人作家のオススメ等がある『SFハンドブック』の方が初心者には馴染み易いハズだからです。つまり『SFベスト201』には親切さが足りない。
逆に『SFハンドブック』等ガイドブックの類は読んでいてある程度SFに馴染んでいる人なら、本書はちょっと物足りない気がします。伊藤典夫氏の序文は価値のあるものだと思いますが、本書の構造は『ライトノベル・データブック』と同じで201冊の紹介が終わった次のページがもう索引になっています。あとがきを記さないのは悪いことではありませんが、執筆者陣のSFに対する考察をもっと載せて良かったのではないか。あるいはここ30年の売り上げ推移やSF刊行数などの資料を載せても良かったのでは。贅沢を言ってしまいますが、こういった資料類の本は後々まで残って人に読まれるものですから、それだけに充分な手間と時間をかけて作られるべきものでしょう。刊行のタイミングってのがありますからそう簡単にも行かないのでしょうが、『SFハンドブック』『SFが読みたい!』を初めとして巽孝之さんの編著など、SF資料書は良書ばかりで粗悪なものを作らない所が好きなので、是非もっと手間を惜しまないで作って頂きたく思います。
本書の悪いところばかりあげつらっても面白くないので良い点を挙げますと、まず紹介・解説者陣が翻訳者ばかりであること。伊藤典夫大森望中村融山岸真(敬称略)……実際に訳した人の紹介ですから、他の誰よりも説得力があります。この本がSF書評価の基準を作るといって言い過ぎではないでしょう。また同様の理由で「レーダーチャート」も新しい試みながら信頼性の高い面白いものになっています。大森望さんは『ライトノベルめった斬り!』で前歴がありますからこの作業に慣れてるわけですな。

SF紹介書籍と言えば、さあ、次はこっちですよ!
http://www.ltokyo.com/ohmori/1500a.html
6月17日発売。ってもうすぐジャン!
アンテナを伸ばせ!