『ローレライ』みた…

都内の映画館で『ローレライ』を観ました。

予備知識殆どゼロの状態で挑んだので始終映画の見方が定まらず、まだ頭の中でまとまっていない感もありますが、一応fuchi-komaなりの雑感を記しておきます。


んー、一言で言うなれば、微妙でした。
第二次大戦や潜水艦というキーワードからミリタリー映画として捉えると○に近い△。実在しない型番の潜水艦伊507の隠密行動が生むドラマはさながら、かわぐちかいじ沈黙の艦隊』のようで、映像面でもそこそこ魅せてくれるんですが、どうも「ローレライ」システムの有用性や現実性など妙なところに目がいってしまって面白く見られません。艦長の行動原理がイマイチ不透明なのも困ったものです。どうも気分屋な人に見えるのですが、あんな人が艦長やっていて良いのでしょうか。別にショーン=コネリーにやらせろとか言うわけじゃありませんけど。


テレビCMの「雨の中女の子抱えて叫んでみたりセカチュー節」のイメージつまりラブ・ロマンスのつもりで観ると△でしょう。恐らくこの路線を期待していたであろう女性二人連れが映画の半分ほどで退席していたのが印象的でした。CMは明らかにブラフであり、一般の方を呼び込むアピールに過ぎないのですね。


本作はfuchi-komaが好きでない俳優が多かったので期待もしていませんでしたが、予想を裏切ってくれるような演技も見られず、そもそも監督の意向で登場人物の内面は深く描かれていないので、とても単純な思考回路の人間方による淡白なドラマとしてしか観られませんでした。先ほど書いた「艦長の行動原理がイマイチ不透明」なのもここに起因するわけですが、餓鬼の論理が通用しないキビシイ世界であるはずなのに(そう描かれているのに)登場する大人たちも随分簡単に物事を片付けているんですね。戦場は考えてはいけない場所なのかも知れませんが、艦長とその周辺くらいの人間はものを考えても良いはずですし、逆に駒として動くべき特攻隊員と艦長が気軽に会話をし過ぎるなどリアリティ問題への批判はWeb上の各所で見られます。fuchi-komaが感情移入出来ないのはリアリティが無い上に人間味が感じられないからなのです。


一緒に観た友人I氏の言葉ですが「『ローレライ』を『Uボート』つまり潜水艦モノの文脈で観ると『ガンダムSEED』に感じた苛立ちを感じるかも」というのは、なるほど納得できます。本作はその文脈で真面目に比較してはいけないようです。そも趣が違うのだ、という事らしいです。
そんなI氏がオススメする『ローレライ』を楽しくみる方法というのがありまして(そして半分それを強要されたのですが)、それは「『海底軍艦』などの一連の東宝特撮映画として観れば面白いネタが各所に詰まっている」という見方でした。実際、海面から潜水艦が飛び出すシーンや(しかも飛び出す前に照準をつけていたりする)、男女二人が乗り込むローレライのワイヤーが切れて飛んでいくラピュタっぽい演出のシーンなど製作側の遊び心満点なので、このようなパロディやB級映画としての視点で見るならば、そりゃあ面白くない事もないでしょう。
しかしその「特撮的お遊び」の判る人間は限られていますし、fuchi-komaのようなただの映画ファンもこの点は評価出来ません。


福井晴敏氏の原作を読んでいないので原作ファン・サイドからどう映るのかは判りません。興味のあるところではあります。しかしfuchi-komaをはじめ数名が『ローレライ』を観て『終戦のローレライ』を読みたくなったというエピソードもありますから、原作の売れ行きは一層期待できちゃうかも知れません。


ローレライ』の感想は以上ですが、夏からの『戦国自衛隊 1549』『亡国のイージス』にはもう少し期待しています。I氏の興味の矛先も本当は『亡国のイージス』に向けられているようでして、それを観る為にも『ローレライ』を盛り上げる必要があるんだ、と熱心に説いていました。それは事実かも知れません。でもfuchi-komaは『ローレライ』を褒める気にはなりません。もっと上の世代から文句が出てくれば「いや、こういうエンタメもあるんですよ」と言えるのかも知れませんが、今はこれを賛美してはいけないように感じています。『プライベート・ライアン』や『パール・ハーバー』を観た時に抱いた思い「戦争をこういう風に描いて良いものだろうか?」これがまた沸々と湧き上がって来ます。


最後に小ネタですが、既に2回観て確認していたI氏に教わりまして、富野由悠季氏と庵野秀明氏の出演を確認できました。二人とも暗いところにボッと立っているものですから、質の悪い映画館だと判りにくいと思います。ホントに一瞬ですし。
あとヒロイン・パウラの未来的な衣装は出渕裕氏のデザインですね。あれは笑えたので、かなり満足しちゃいました。ドイツの超科学はすごいね、とかそういうノリで観れば案外悪くないのかもなぁ。fuchi-komaは失敗しましたが、これから観るつもりの方は、ネタは素直に笑って楽しんで下さい。是非そうして下さい。