SFマリア様が見てる


冬コミの収穫は色々ありましたが、筑波大学SF研究会アルビレオhttp://www.stb.tsukuba.ac.jp/~albireo/)さんの販売していた文庫本(手製)にはすっかり笑わされました。
何といって、そのタイトルも『SFマリア様がみてる』。どひゃー。ナンじゃそりゃと思うでしょうが、これは内容もそのまんま、SFでマリア様が見てるなんですよ。どういう事かというと、本文最初のページを引用しますが、

クリアエーテル
クリアエーテル
さわやかな朝の挨拶が、澄み切った青空にこだまする。
アリシア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐりぬけていく。
汚れを知らない手首を包むのは、深い色のレンズ。
スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。もちろん、遅刻ギリギリで個人用無慣性駆動機(バーゲンホルム、のルビ)を使うなどといった、はしたない生徒(レンズマン)など存在していようはずもない。
…(続)

とまあ、こんなわけですよ。
第一章タイトルは「アリシア様がみてる」で、紅薔薇様(ロサ・ヴェランシア)の妹(ブティ・メンター)になった少女が主人公。って要するにストーリー設定は全て元ネタと一緒なんですけど、用語がことごとくレンズマンしてるんですね。山百合会銀河パトロール隊)や薔薇様(第二段階)につぼみ(グレー)などのルビ芸が細かく、著者のレンズマン愛がよく判ります。章タイトル「ロサ・カロニア」や「バーゲンホルムの贈り物」など章タイトルの付け方も上手いです。fuchi-komaは実はレンズマンシリーズはサムライ・レンズマンしか読んでない邪道者なのですが、それでも判るネタの豊富さ。E=E=スミスは大体読んでいる、私なぞより遥かに詳しいSF者エイジさんもその辺りは褒めてらっしゃいましたし、大いに笑っておられました。
手作りとあって、装丁の出来など苦労はされたのでしょうが、少し雑な仕事になっているのが玉に瑕。後は登場人物の名前が全て元ネタそのままなのも如何なものでしょうか。しかし、そんな些細な事はどうでも良いです。中身はとても面白いです。SF者でレンズマンが判れば元ネタよりも遥かに面白い事請け合いです。これぞパロディの白眉でしょう。
エイジさん曰く「タイトルの“SF+普通のタイトル”というのもポイント高い。SF西遊記とか、そういうノリでしょう」との事。ははぁ、なるほど。これは内容も「レンズマン」の用語ばかりなのに、話がマリみてそのままだったりするギャップが面白いんですねぇ。他にも「ベクターシグマ様がみてる」(トランスフォーマーだそうで)、「スールをねらえ!」(解説無用!)、「こんなマリア様は××だ!」(鉄拳?)、「マリア様の戦旗Ⅰ」(星界新作です!)など全五話の構成で楽しませてくれます。レパートリーの広さ(ある意味狭い?)もウリの、良作パロディ本なのです。
いやぁ、面白かったです。ご馳走様。ウチのサークルでこういう趣向をやっても楽しそうだなぁ…と思ったけど、ウチで皆に共有知識があるのって、マリみてドクロちゃん、それにクトゥルーくらい…? 何れも既にパロディめいている上に多くのパロディがあるようで。難儀な事です。ギャフン。