『ライトノベル☆めった斬り!』

ライトノベル☆めった斬り!

ライトノベル☆めった斬り!

最近話題のライトノベル関連本は一通り読んでます。これはちと高い本だと思いながら買ったのですが…。

いや〜、いい本だなぁ。今のところ出ているライトノベル関連本の中では一番「買って良かった」と思える本です。楽しかった〜。
タイトルの「めった斬り!」というフレーズから想像していたものとはだいぶ違って、ライトノベル30年史(苦笑)と言われる歴史を根っこから掘り出し舐めるように見ていく、言わば歴史書の風味。出版(SF)業界人として流れの渦中を体験している大森望三村美衣、両氏の掛け合いがとても面白いです。
対談の合間に挟まるライトノベル100冊紹介も二人がキッチリ書いていて各作品の魅力や欠点を余すところ無く伝えています。これは日経の『完全読本』や宝島の『このライトノベルがすごい!』などの中途半端な紹介に比べ、格段に面白く、且つ信頼に足る内容でしょう。そうfuchi-komaは思います。

一方で「これは出版業界の暴露本に近いが、そういうのを求めていないライトノベル読者にはどうなんだ」という意見があります。何処とは言いませんが、ネットの書評サイトの類でたまに目にします。しかし本書は明らかに玄人向きに作られているのがこれまでのライトノベル関連本と違う点ですから、これは肯定的に捉えて問題ないとfuchi-komaは思います。薀蓄を楽しめる人間は素直に楽しめばいいじゃあありませんか。
これまでの「ライトノベル」関連本をみると「初心者に優しくなきゃいけない」みたいな不文律があるように思いますが、それは「まだ世間の認知度が低いからライトノベルをよく知らない人に面白さを知ってもらおう」という試みであるからだと判ります。それに対し本書は「ライトノベルっていうのはさ、こういう風に生まれて、育って来たんだよね」と背景を語る歴史書です。歴史書というのは、歴史を知りたい人が読むものです。それに向かって「(歴史を語る)薀蓄はいらない!」なんて事を言うのは、何とも滑稽ではないでしょうか。
確かに固有名詞の脚注など「見え過ぎちゃって、ちょっとグロテスク〜」な面が無いとは言いませんし、「歴史書」と称するには二人の嗜好バイアスが少々キツイのも否定出来ません。しかしそれを解かる人が読んで「初心者はこういうの、求めてないんじゃないの?」「必要ないのでは?」というのは変です。単純に手放しで褒めるのが嫌だったのか、照れがあるのだと思いたいですが…どんなものでしょうね。