ドゥームズデイ・ブック(上) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-4) (ハヤカワ文庫SF)  ドゥームズデイ・ブック(下) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-5)

ドゥームズデイ・ブック(上) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-4) (ハヤカワ文庫SF)
ドゥームズデイ・ブック(下) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-5)
合宿中に『ドゥームズデイ・ブック』を、読書会の一時間前くらいにようやく読了。読書会自体もつつがなく終了。読書会は“つつがなく”終了しない方が面白いのだけど、この本はあんまり突っ込んで議論する本では無かったです。
これはタイムトラベルものではあるけれど、そのタイムマシンたる「ネット理論」が「歴史を変える要因は通さない」など基本的な作用しか説明されないため、そこにツッコミはいれられません。そもそも本書はそういうロジカルな部分をで読むものではなく、誤って黒死病が蔓延する中世にタイムトラベルしてしまった少女キヴリンが目の当たりにする悲劇を語る、そのメンタルな面を重視して読むべきではないかと思います。あと現代編のコミカルなやり取りも、私はイマイチ楽しめませんでしたが、悲劇と喜劇が作中で対応しているから、何れの面も踏まえて楽しむのが正しい読み方だ! と先輩に力説されました。うーん、その通りですね。本書ばかりは、「キヴリン萌え〜」だけじゃ読めないと思うんですが、如何でしょうね沼○さん。
ヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞トリプルクラウンに輝いた『ドゥームズデイ・ブック』ですが、読書会では「ヒューゴー・ネビュラはいいとして、ローカス賞をやるのはおかしい。それほどのものじゃない」などの意見も出ました。なるほど、これは「SFとして」評価する場合にどうかという話ですね。オースン・スコット・カードの『死者の代弁者』も(ダブルではなく)トリプルクラウンの意味があるかというと、これもどうかなと思いましたけどねぇ。
SFとしてどうというより、私が読んで良かったなぁと思うのは中世における「黒死病(ペスト)」の恐ろしさを凄まじい描写で伝えて、考えさせてくれた事だったので、深く考えない方がいいかなと思います。

*これから読む方に一つ忠告。上巻はちと退屈でしたが、下巻が一気に面白くなるので、途中で投げないようにして下さい。